広間に着くと、シャールカーンは何者かと談笑していた。
それが貴族のカカーンで、今自分をこき使った女性がカカーンの娘であることなど露とも知らないサフィーアは、頭に疑問符を抱えたまま櫃を床に下ろした。
「お待たせ致しました。父上、太守様」
「おお、やっと来たか」
カカーンが自慢の娘を笑顔で迎えた。
「太守様の御身に平安あらんことを」
彼女が拝謁のため礼の姿勢をとると、女奴隷達も一斉に礼をした。
まだその場にいたサフィーアも釣られて頭を下げる。
「汝の上にも平安あれ。御息女までわざわざ出向いてくれたとは…。美しい声だね。ベールに隠れた君の素顔も、さぞや魅力的なんだろうな」
シャールカーンは愛想のよい笑みを浮かべながら日常的な口説き文句を口にした。



