砂漠の夜の幻想奇談


有無を言わせぬドニヤの笑顔に負け、サフィーアは刈り取った羊毛を抱えた。


羊の群れを追い立てるドニヤの背中を見送ってから、屋敷へ入ろうと歩き出したその時――。


「何をグズグズしているの!さっさと運びなさい!」

門の方から、女性の叱咤する声が聞こえた。


(何かしら?)


気になったサフィーアは門に近寄った。


「も、申し訳ございません!しかし…この人数では、とても持ち上げられず…」

「全く…仕方ないわね。太守様の召使に手伝わせましょうか」


そこには美しく着飾りベールで顔を覆った女性と、その女性の召使と思われる女奴隷が数人いた。

揉めている原因は、シャールカーンに献上すべく宝石をぎっしり詰め込んだ櫃(ヒツ)。

運ぼうにも重たくて持ち上がらないのだった。