砂漠の夜の幻想奇談


礼をしてからバルマキーは、ふと思った。

「トルカシュを行かせたのは…やはり…」

「ああ…。あいつの親族だからね。親兄弟じゃないとは言え、聞かされて気持ちのいい話ではないだろう?」

「王子…」

シャールカーンの気遣いに、バルマキーが嬉しげな表情で口角を上げた。


「なんだっけ?トルカシュの一番上の姉の夫のおじの息子だったか?」

「あまり深い縁はなさそうですね」

「そうだね。いらない気遣いだったかな。トルカシュが相手の顔を知っているかも怪しい」


二人が軽口を叩いていると、慌てた様子で男の召使が部屋にやって来た。


「も、申し上げます!ただ今、貴族(アミール)ファドレディン・ベン・カカーン様が御息女を伴い、門前まで参られております」