砂漠の夜の幻想奇談


「そう…わかった」

手の震えが弱まった。

やはり不安だったようだ。


「疲れてはいない?少し眠るといいよ」


上体を起こしていたサフィーアを、再び寝台に横たわらせる。

本当に疲れていたのか、彼女は大人しく横になった。

そのまま力を抜いて、まぶたを閉じる。

王子はこの年下の姫に寄り添うように、自分も寝台に寝転がった。

滑らかな黒髪を優しく梳いてやりながら、ふと蘇った古い記憶に刻まれた子守唄を口ずさむ。



「あなたを、思うたび

我が心は…

砕かれて、揺られて

千々(チヂ)とはなりぬ…

心の渇きを、癒す君よ

その輝く眼(マナコ)に…

私を映してくれ

愛しさ募る

永久(トワ)に、切なくて…


もしも千の夜があなたを、隠そうとも

この心は、永遠に、あなたに捧ぐ

夜明けを待ち続け…」