砂漠の夜の幻想奇談


「私、声が出せなくなるわ。それでも、いいの…?」

彼女の手から微かな震えが伝わってくる。


(この震えは…恐怖?いや……)


ここでシャールカーンは気づいた。

彼女は不安なのだ。

たった一人、奴隷の身分に落とされて、結婚を迫られて、祖国にも帰れず、もうじき声も出せなくなる。

安心などするわけがない。


けれど、彼女の安心を奪う原因の半分が自分にあるとしても、シャールカーンはこの状況を変えようとは思わなかった。

ただ、この国にサフィーアがいる限り、自分が彼女を守らなければ。

そう、強く思った。



「構わない。声がなくとも君を思う気持ちに変わりはない。だから、安心して…」


そんな言葉を言う資格などないけれど。

そう心の中で自分を嘲笑う。