めでたくも悲しい事件が起きてから十四年後。
十二人の兄達を犠牲にして生まれた赤子は元気な少女へと成長していた。
「姫!どちらへおいでになるのですか。もうすぐ夕刻の礼拝のお時間です」
「しー!大声出さないでカシェルダ。父上に見つかっちゃう」
静かな王宮の廊下を姫と呼ばれた少女が小走りで進む。
そして、彼女の後を犬のようについていく青年カシェルダ。
「サフィーア姫!どうかお戻り下さい」
小部屋の扉を開けるサフィーアを見守りながら、カシェルダはもう一度たしなめた。
けれど姫は生真面目な護衛係りの話など聞いちゃいなかった。
カシェルダの言葉を無視して小部屋の中へと入っていく。
そんな姫を見て溜息をつきつつ、彼も中に入っていった。



