砂漠の夜の幻想奇談


「なんとでも。とにかく、絶対に許しませんからね」

次男ディノスの剣幕が凄まじい。

しかし、それをものともせずにダハナシュはおどけた調子で言う。

「ならば残念ながら、姫は徒歩でお帰りになられるしかないなぁ」

「貴様、二度も口づけを強請るなど…強欲過ぎる己を恥じれ!」

カシェルダが今にも切り殺しそうな殺気を放った。

すると、やれやれと言うふうにダハナシュが少しだけ折れた。

「わかった。かなり譲歩してラクダを一頭、貸してやろう。それを足にするといい」


「……ケチ臭い魔神め」

カシェルダがボソリと呟く。

「カシェルダ…?」

気になった様子のサフィーア。

けれど彼はその端整な顔に笑みをはりつけた。

「何でもありません。姫、仕方ありませんからラクダでひとまずダマスへ行きましょう」

「カシェルダ、道わかるの?」

「はい。ご安心を」