「何で、オレだけにそんなに怯えてるんだ」

「そ、それは・・」

若干、怒った口調にも聞こえた。・・・が、

そんな事は、本人は全く気付いていない。


美織は小さくなってしまい、困惑の表情で、東吾に

SOSのサインを送っている。


それに気づいた東吾はクスッと笑った。

「美織をあまり苛めるな、龍之介。

ただでさえ控えめで静かな性格なのに、

そんな怒った口調で言われたら、何も言えなくなるだろう?」


東吾の言葉に、しばし沈黙。

「オレはみんな同じ口調で言ってるつもりだ。

美織だって、小さな頃からずっと一緒だったんだから、

気にすることは何もないはずだろ」


そう言って、ワインをグッと一気に呑み込んだ。

…面白くない。

美織には、他の奴らとは違うように、少しは優しく接してきたはずなのに。

なぜそれが美織に伝わらない?

オレはずっと、ずっと、美織一人を想ってきたのに・・・

その気持ちも、届かないのか・・・


「…龍之介さん」

小さな声で、オレを呼んだ美織。

「なんだ?」

拗ねていた為に、冷たい口調になってしまったのは、

自分でもわかった。