「美織、龍之介の言葉は本当か?」

静かに言った東吾だったが、顔は明らかに怒っている。

秘密にしていたからか?

それとも、相手が龍之介だからか?

どちらにせよ、怒っているのは事実で。


「…本当よ、お兄ちゃん」

私は一つ溜息をつき、東吾の告げた。


「相手が龍之介なんて許さない。

コイツはお前には相応しくない、変人で・・・

美織の事を軽く扱うから・・・」

東吾はそう言うと、私の腕を掴んだ。


「大泉社長、今夜の所は連れて帰ります・・・

前にも言いましたが、私に何の連絡もなく、美織とこうやって会う事は、

正式に付き合い始めるまで避けてください・・・

親代わりとしての責任がありますから」


「わかりました、以後、気をつけます」

社長である大泉要に、ここまで言えるのは、東吾位の物だろう。

まぁ、美織の親と言われれば、こういう態度のなるのも仕方がないのだが。


「龍之介、金輪際、美織には近づくな」

「待て、東吾!」

それ以上何も言えなかった龍之介。

それも仕方がない事だった。

幼なじみで、東吾の事は一から十まで知っていたに違いない龍之介だったが、

今夜の東吾を見たのは初めてだった。