仕事終わりと言う事もあり、食事に連れて行く。

この気まずい雰囲気をどうにかしなければ。

そんな思いで連れて行った店は、


「・・・凄い、素敵」

美織は思わず目を輝かせてそう呟いた。

…オレはホッと溜息をつく。

美織は、豪華なレストランなんかは苦手なようだ。

前に連れて行ったレストランを大そう気に入っていたし、

見合いの席で、バッタリ美織にあった時だって、

店内をキョロキョロと、挙動不審に見渡し、

自分は場違いじゃないかと言う不安そうな顔をしていた。


それならと、ここに連れて来たのだ。

店構えは落ち着いていて、店内は、個室に仕切られた

人目を気にしなくていい作りになっている。


「気に入ったか?」

「はい…ありがとうございます」

「礼なんて」

オレはただ、美織に楽しんでもらいたいだけで。


「お礼を言っても、足りないくらいです」

「・・・え?」

不思議がるオレに、美織はニコッと微笑んだ。

その微笑みに、心臓が跳ねる。

美織は知らない。その笑顔があれば、それだけで、

どんなに幸せなのか。


「この前だって、私が好きそうな、自分のプライベートのお店に、

連れて行ってくれましたよね・・・

オーナーが教えてくれたんです、ここに女性を連れて来たのは

『初めて』だと」