「何?」

「…私を想ってきたなんて、私を好きだなんて、

嘘に決まってます」


そう言った私は、泣きそうになっていた。

それがなぜなのかなんてわからない。

でも、龍之介の言葉が信じられなくて・・・

私と龍之介が、あまりに不釣り合いで・・・


「・・・何で泣きそうな顔するんだよ」

怒っていたはずの龍之介の顔は、戸惑いの顔に変わっていた。


「…私なんか、龍之介さんには似合わない」

「・・・そんなこと誰が言った?」


「・・・私自身がそう思うから。

星野建設の社長と言う重役、私とは全くの真逆なスタイル抜群な

カッコいい龍之介さん。こんなちんちくりんで、何も持ってない私なんか、

龍之介さんがもったいない」

そこまで言って、自分の中の涙腺が壊れた。

ドッと溢れる涙。

…手が届かない雲の上の人。

私が、私こそが恋い焦がれた人・・・

だから怖かった。

近寄る事すら出来なくて、ただただ、遠くから見守る事だけしか

出来なかった。


「…バカ美織」

そう呟いた龍之介は、私を包み込むように抱きしめた。