シュシュ~番外編①~

「どうした、…美織」

オレを呼び止めたのは、美織だった。

…珍しく、大きな声で、呼ばれ少し驚いた。

大きな声を出すと、こんな声なのか。と思わず思ってしまった。


「ぁの、これ!」

「え?」

オレに押し付けた紙袋。…中には箱のような物が。


「どうしたんだよこれ、美織?」

東吾が顔を覗かせ美織に尋ねる。


「今日、お兄ちゃんに言付ける筈だったお礼の品」

「…お礼?」


「この前、家まで送ってくれたから」

それだけ言うと、逃げるようにその場を立ち去った美織。

オレと、東吾はその後ろ姿を、数秒、何も言えず、見つめていた。


「…なんなんだアイツは」

数秒後。東吾がボソッと呟いた。

「さぁな」
呆気にとられている為、そんな言葉しか出なかった。


…車の中、美織からのお礼の品をそっと紙袋から取り出す。

「…ネクタイ」

オレの好きな柄のネクタイが箱の中から出てきた。


「お、いいな。龍之介に似合いそうだ」

バックミラー越しにチラッと見た東吾が呟いた。

・・・思わず、顔がニヤける。