「…東吾の気のせいだ」

そう言ってごまかし、書類に目を通す。

・・・すると、東吾がククッと笑うのが聞こえ、

思わず顔を上げた。


「…それで、ごまかしたつもりか?まぁ、いい。

相談したくなったら、いつでも聞くよ」


「・・・」

2人で目を見合わせ、笑顔の東吾に、眉をひそめるオレ。

…いつかはバレるかもしれないが、今はまだ言えない。

ましてや、美織にキスしたなんて、口が裂けても言えない。



それから一週間ほどは、仕事に没頭し、美織に会う事もなかった。

・・・が。

全く予想外の場所で、美織に会うことになる。

どうして、美織はこんなところにいるのか?



「・・・知らなかったのか?」

取引先の会社の社長室。

来るまで待っている間に、東吾がオレに言ってきた。


「…当たり前だ。社会人なのは知ってるが、

まさか、この会社にいたとは・・・しかも、

この会社の社長秘書とかありえないだろ」

…全く、何で美織が・・・

そう思っただけで、ため息が漏れた。