「…心配するな、1杯や2杯、どうってことない」

そう言って微笑むと、美織はなぜかまた赤面していた。

…面白い奴だな。そう思わずにいられなかった。


…車を走らせる事数十分。

美織の家に着いた。…美織の家から、オレの家まで、

徒歩でも5分ほどの距離。

それでも、美織の家に来たのは、これが初めてだった。


「ありがとう・・・ございました」

そう言って、さっきみたいな笑顔を見せた美織。

流石に今度は理性を保って、頷くだけにした。

・・・マンションの中に入って行った美織を確認し、

車を出そうとすると、助手席で何かが光った。


…これは、美織のイヤリング。

前に東吾が言ってたっけ。自分の耳は親から頂いた大事な物だから、

穴は開けられなんだと…だから、ピアスはせずに、イヤリングをつけてると。


オレはそれを握りしめ、美織のマンションの中に入っていった。

中にはいる時、しっかり、何号室か確認して。



「…美織」

「・・・ぇ?」

丁度、部屋の中に入ろうとしていた美織を呼び止めた。

不思議そうな顔で、オレを見つめる美織。

オレはすぐ目の前まで行くと、美織の目の前に、イヤリングを差し出した。


「・・・ぁ」

美織は耳を確認していた。