「・・・時雨」
「み、なと・・・っ」
湊に名前を呼ばれる度に、必死に湊を見つめようと想うのだけれど、それすら上手く出来なかった。
誰も知らないところへ。
湊しか知らない場所へ。
連れて行って。
恥ずかしさも緊張も、そんなもの何一つなかった。
ただ、湊にしがみついて離れたくなかった。
二人の息遣い。
衣擦れの音。
私と湊の鼓動。
窓の外では、静かに雨が降っていた。
その音が、私達を二人だけにしてくれた。
あぁ。
やっぱり、私達を隠してくれるのは、雨なんだね。
ありがとう。
いつも優しい音で、私達を包んでくれて。
湊と私が二人の時は、いつもこうして優しい音を奏でてくれて。
でも、お願い。
今だけは静かにして。
湊の心臓の音がこんなに近い。
私ですら知らない場所まで、湊が届いてる。
耳元で聴こえる。
掠れた声で、湊がこれから放つ、きっと大切な言葉。
聴き逃したくないから。
もっと近づいて。
もっと傍に。
そんな想いを込めて、湊を抱き締めた。
「愛してる」
また一つ、涙が溢れて。
その声を聴いた私の世界は、眩しく煌いた。

