湊の部屋は、この人の匂いがした。
電気も付けず、湊は私をそっとベッドに横たえた。
ベッドが軋む音がする。
さっきよりずっと長く、ずっと深く唇が重なる。
私の身体に湊の重みが重なる。
湊の両手が、私の顔を掴んで離さない。
少し唇が離れ見つめ合う。
頬にある手をぎゅっと握り締めた。
湊の冷たい手が。
今。
ここにある。
「湊・・・、好き」
目の端からは涙が止まらない。
もう、好きで、好きで。
好きになり過ぎて。
私が言った言葉を聴いて、湊は固まってしまった。
それだけで不安になってしまう。
私は、また何か、変なことを言ってしまったのだろうか。
「時雨・・・。俺、優しくできる自信がない」
湊は、とても辛そうな顔をしていた。
そっと私の輪郭をなぞるように、優しく触れながら。
「初めてなのに・・・、ごめん」
そう言って、私に返事をさせない、とでも言うようにキスをした。
湊の冷たい指が、少しずつ私の素肌に触れる。
その度に身体が反応する。
息が上がる。
こんな声、知らなかった。
こんな感覚も、知らなかった。
湊の触れたすべての箇所が熱い。
身体中が溶けるように、どんどん体温があがる。