高校二年の夏休み。

私は、湊の運転する車で少しだけ遠出をした。

真新しかった制服は、一年もすると私の為にあつらえたようにしっくりと身体に馴染んでいた。



休みの間だけは、それを脱ぎ捨てる。

私服でいる時のほうが、湊との距離を感じずにいた。




湊と距離を感じているのは、そればかりではない。



湊は、私に多く触れようとしない。

周りと比べるわけにはいかないことは、十分にわかっている。

それでも、身体が触れ合うことがないままで心の距離を縮めることに、限界を感じ始めていた。




高二にもなると、周りの友達からは彼氏と『お泊りデート』するための、アリバイ作りを頼まれたりもした。

初めて二人で泊まりで出掛けるということは、つまりそういう目的ってことだ。



そんな話題にキャーキャー言っていた。

その頃には、いわゆる『初体験』を済ませた子達の話に赤くなったり質問をしてみたり、と興味津々だった。




私が一番羨ましかったのは、それを報告できることでも、そういう経験をしたことでもなかった。


初体験を済ませた彼女達は、とても幸せそうな顔をしていた。




心と心が触れ合ったのだ、と。