ただ、今はそれを若手営業に指導することもしている。


なので、松山と篠木は私が抱えている企画書をまず作らせるようにしている。

外に出て仕事をするのは、企画営業部でなくても出来る。

それこそ、営業部メンバーに任せておけばいい。


挨拶にこそ出かけるものの、その他は中でどんなことをしなくてはいけないか、しっかり覚えてもらわなくては。




「時雨さん、ちょっといいですか?」




頭を抱えた松山が、私の席までやってくる。

篠木はまだ外出したままなので、一人で企画書のために知恵を絞っているのだ。




「いいよ。煮詰まったところでも出てきた?」




松山は実は『こういうこと』に向いていない。

それは、企画書作成や報告書作成だ。


篠木の得意分野であり、それを一生懸命勉強している。

松山なりの努力は認める。

けれど、文章化していくことの難しさに苦しめられることも多いようだ。




「企画書のここの部分なんですけど・・・」


「あぁ、この部分ね。ここは――――――」




松山が差し出したのは、櫻井さんのクライアントの中でも一番古いお客様向けのものだ。

文字の見易さとシンプルさが重視される。



ということは。



文章をまとめる力がないと出来ない、ということだ。


この企画書を渡すのは酷だったかな、と思いつつ、松山のためになるのだ、と言い聞かせていた。