劇場を出て、映画館を出てもなお、彼は手を離そうとしなかった。 「あの…手…」 しびれを切らして私が言うと、岳君は振り向いていじわるそうな笑みを浮かべ 「離したくなくなっちゃった」 と言った。 そんな風に言われると何とも返せず、ただ、無言で手を握り返すことしかできなかった。 「ありがとう、結ちゃん」