◆
エルダンは自分の目が信じられなかった。
白い世界——その中に自分はいた。
自分だけではない。
フィリアムも来訪者もその中にいた。
来訪者は驚いて、銃の引き金を引くことを忘れている。何もない世界を見渡して呆然としている。
「ここは……どこだ!?」
そんなの俺が聞きてぇよ。
銃を持って詰め寄る男からエルダンは目をそらした。
「答えろ!……答えなければ撃つぞ?はったりじゃないからな」
「答えを知らなければ答えなんて言えねぇよ」
「嘘を言うな!」
そこまで言って男はフィリアムの方に振り返る。
エルダンもつられて見る。
そこには立ち尽くすフィリアムの姿があった。——その姿から、異様な何かを感じる。
美しい緑と青の目は妖しく光り、銀の髪は風もないのにふわりと舞い上がっている。
「おい!お前、一体何をした!?」
最初はゆらゆらと揺れていたフィリアムの目は、ゆっくりと男を捉える。そして、少女は笑った。
「選ばしてあげる」
鈴のような声。
前から美しい声だと思っていた。だが、この何もない世界の中では、今までと比べ物にならないほどうつくしく聞こえた。思わず目を閉じてフィリアムの声に聞き惚れそうになる。
男も一瞬惚けたように動きを止めたが、ハッと正気に戻る。
「——何を選ばせようってか!?」
そして、男はあろうことかフィリアムに銃口を突きつけた。


