エルダンは自分の目が信じられなかった。
白い世界——その中に自分はいた。
 自分だけではない。
 フィリアムも来訪者もその中にいた。
 来訪者は驚いて、銃の引き金を引くことを忘れている。何もない世界を見渡して呆然としている。


「ここは……どこだ!?」


そんなの俺が聞きてぇよ。


 銃を持って詰め寄る男からエルダンは目をそらした。


「答えろ!……答えなければ撃つぞ?はったりじゃないからな」

「答えを知らなければ答えなんて言えねぇよ」

「嘘を言うな!」


 そこまで言って男はフィリアムの方に振り返る。
 エルダンもつられて見る。
 そこには立ち尽くすフィリアムの姿があった。——その姿から、異様な何かを感じる。
 美しい緑と青の目は妖しく光り、銀の髪は風もないのにふわりと舞い上がっている。


「おい!お前、一体何をした!?」


 最初はゆらゆらと揺れていたフィリアムの目は、ゆっくりと男を捉える。そして、少女は笑った。


「選ばしてあげる」


 鈴のような声。
 前から美しい声だと思っていた。だが、この何もない世界の中では、今までと比べ物にならないほどうつくしく聞こえた。思わず目を閉じてフィリアムの声に聞き惚れそうになる。

 男も一瞬惚けたように動きを止めたが、ハッと正気に戻る。


「——何を選ばせようってか!?」


 そして、男はあろうことかフィリアムに銃口を突きつけた。