こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—





 フィリアムは膝の間に頭を入れる。
 そんなこと言われなくてももうわかってる。

 自分がどれだけ愚かなガキだったかなんて。

 家に帰らないのは、帰りたくないからではなく、帰ることができないからだ。
 お父さんに迷惑かけて、失望されて、一体どんな顔をして会えばいい?
 自分にはそれがわからない。


「破赫の牙にやられたらお前みたいなガキじゃ一瞬でお陀仏だぞ?大の大人でも一瞬で死ぬような毒持ってんだ……セルファだから生きてるようなもんだって大婆様も言うくらいだからな——ってなんだその顔は」

「今……」


 フィリアムはエルダンににじり寄る。


「お前みたいなガキじゃお陀仏?」

「違う!」

「大の大人でも一瞬で……」

「そのあと!!」

「……セルファだから生きてるようなもの?」


 フィリアムは大きな目を見開くと、小刻みに揺れ始めた。それは怒りからきたものだった。


「——エアリエル!」

《なぁにぃ?》

「あなた知ってたんでしょ!?」

《何を?》

「恍けないでっ——お父さんが怪我してること使い魔の貴女なら知っていたんでしょう!?」

《当たり前よ?》

「どうして——っ」


 声を荒げてから気付く。