こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—





***



 
「フィオ?」


 木の上で蹲る猫みたいだ。
 想像でつけた猫の耳がフィリアムによく似合ってる。

 可愛らしい姿にエルダンはハハッと笑うが、それを恨めしく思うフィリアムだった。


「聞いたぞ。セルファさんに叱られたんだって?」


 だから、言ったのに。そう言ってエルダンはやれやれと息をついた。


「勝手に一人で、しかも夜の森?そりゃぁ怒られるわな」


 余計なことをエルダンのせいで思い出してしまう。


 昨日の夜フィリアムはこの木の下で夜を明かしていた。村の人が起きてからは木の上で。
 今まで誰にも見つかっていなかったのに。エルダンにはいとも簡単に見つかってしまった。それがまた、悔しい。


「エアリエルも一緒かよ……お前セルファさんと一緒にいなくていいわけ?」

《私たちの大事な大事なフィリアムを泣かせたのよ?許せないわ》

「どっちの眷属だよ……ったくしょうがねぇ奴らだな」


 エルダンは手慣れた手つきで木を登るとフィリアムの横に腰掛けた。


「なんでまた森に行ったんだよ?」

「……」

「無視か……いい度胸だな」

「そっそんなつもりじゃないです!!」


 じゃあなんで、と言い募られて、結局。


「お父さんにいいとこ見せたかったの……」

「その結果がこれかよ」

「だって破赫が出るなんて思いもしなかった……」

「予想外でもそれに対応できるようになってから森に出ろよ」