千歳side





伊緒は本当にあのあと家に帰った。


ずいぶんと経ってから席に戻ってきて、

「体調が悪くなった」

と言って帰って行ったので、


別に俺が怪しまれることはなかった。





家に帰ると、夕飯だけが机の上に置いてあって、伊緒は寝ていた。





やり過ぎた……かな……。





どうにも歯止めが利かなかった。



ずっと馬渕と話しやがって。



滅多に笑顔なんか作んねぇくせに

あいつには笑顔ばっか振り撒きやがって。




むかつく……。





「ハァ……」



ため息が漏れた。



サンダルを履き、外に出た。



肌寒くなってきた。



きれいに育った薔薇の前にしゃがみこむ。




「紗夜……。」


小さく呟いた。