「……伊緒…………」





千歳は泣いていた。







「大丈夫。別に忘れろなんて言わない。



思い出して。



悲しかった思い出ばっかりじゃなくて。



楽しかった思い出も。



紛らわさなくったっていい。



千歳の中のお母さんも、紗夜さんも、


大切にしていいから。」





「……紗夜と…………逆のこと言ってる…………」



「そうなの……?」


「………………。」




ああ、好きだな……


本当に……いとおしいな……




「…………私が……



私が愛してあげる。」




千歳の肩がピクッと震えた。