引き留めるその声に、お辞儀をしていた顔をゆっくりと上げる。
「せっかくのクリスマスだから、イルミネーションでも見に行かない?」
え、なんで。
「何でですか。あんなのただの電球ですよ。わざわざ見に行く価値が見出だせません」
それにめんどくさいし。
「いいから。綺麗な夜景、見せてあげる」
そう言って、右手をつかまれた。
「…強引すぎます」
「ごめんね。でも、これくらいしないと、深雪ちゃん気づいてくれないでしょ」
「は?」
何に気づくの。
握られた右手を掴む力は強いけど、引っ張っていく力は弱い。
歩調も合わせてくれるから、躓いたり転びそうになったりもしない。

