最悪だった印象の、出会い。
最低だと思った相手。

でも、俺はそんな奴を好きになった。

男なのに。同性なのに。

でもそれも今日で終わりにしよう。

俺の思い出の中に“男に恋しました”なんてみっともないこと。

一つも残したくはないから。

オレンジ色の空を見るたびに。
そんなこと、思い出したくはないから。



 授業はほとんど頭に入らなくて、先生が言っていたことの一つもノートに書けないまま、終わっていった。

放課後、というより、もう放課後もしばらくたっていて、それでも席を立てずに、俺は座り込んでいた。

 ここまで来て、まだ、迷ってる。

 ちゃんと決意したのに。
 ちゃんと今日言うって、祐也に伝えたのに。

 だらしがない。臆病で、怖くて、逃げたくて。

 嫌われるのは目に見えてわかってるから。

だから、どうしても席から立ち上がれずに、情けなくて、涙が出そうだった。


「・・・あの、星崎君」


 そんな俺のところまでわざわざ来て、相沢は下を向いた。

「帰んないの?」

 聞いてきたから。

「お前に関係ないだろ。お前こそ、帰れよ」

 言葉を投げた。

「・・・あの、星崎君、昨日のことなんだけどさ」

 俺の質問に返答しないで、相沢は勝手に喋り始めたので、俺はそれを黙って聞こうと、一瞬相沢の方を見た。その時、相沢の目のあたりがキラリと光ったように見えた。



 泣いてるのか? どうして?