カズが手を振ってだんだん小さくなって行く。

 残されたオレと祐也はただそれを呆然と見ているしかなかった。


「シン、誤解って…?」


 言おうとして、空を見上げた。
 少し紫色のところもあるけど、もうほとんど黒くなりかけた空だ。

「明日」

「え?」

「明日のオレンジ色の空の時間に、会わないか?」

 それでもオレはこだわりたかった。

「オレンジ色の空の時間?」

「そう」

「わかった。じゃ、オレンジ色の空の時間に、ここで待ってるね」

「うん」



 明日。オレは祐也に告白しようと思う。



 きっと祐也は男に告白されて気持ち悪いとか思いながらも、笑って「ごめん」なんて言うんだ。きっと祐也ってそういう奴だと思う。


 だから、明日。


明日を過ぎたらもう祐也には会わなくていい。

 ノートも書かなくていい。

「シン?」

「…何でもない。帰ろうぜ」

 言いながらオレは、祐也の手を取った。

 オレの手は震えていたかもしれない。いや、震えていただろう、きっと。


 それでも、最後に。


「あ…うん。帰ろうか」


 いつもオレの心を惑わせた祐也の笑顔が見たかった。


 当たり前のように笑った祐也が歩き出した。

 オレもそれの後ろを歩いた。


 つないだ手が離れなければいい、なんて、女の子みたいなことを考えながら。


 最後まで、商店街を出て別れるまでずっと。

 手を離さずに笑っていてくれた祐也と、明日。




 この場所で。
 世界一辛い、思い出になろう。