「昨日、クレープ屋出て、相沢と別れた瞬間から、祐也の様子が、」

 なるべく冷静に伝えようとしてても、言葉が出て来なくてぶつ切れになった。

『様子が?』

「…おかしく、て」


 それ以上は何も出て来なくなった。

『おかしいって、何が?どういう風に?』

「どういう…っていうか…。元気、無いし、笑ってくれない、し、相沢の背中見て、哀しそうな顔する、し…」


 そこまで言って、ようやくカズも理解してくれたみたいだった。

 受話器から聞こえていたはずの、カズの声が一瞬消えた。



『…シン、もしかして今泣いてる?』
「…え?」


 
 突然の突拍子もないカズの言葉に、左手を頬に当てた。

その手でゴシゴシと目をこすって、また一つ大きく息を吸った。


「泣いてなんかない」


 震えた言葉が、カズには全部聞こえてしまっていただろう。



 それでも、認めたくなかった。



 嫉妬して泣いてる自分なんか、誰にも知って欲しくなかった。



『明日、オレ相沢に聞いてみるよ。何があったのか。ちゃんとそれ、シンに教える』

「…でも、お前、そんな」

 申し訳なくて断ろうとした、その時に。


『だって、仕方ないだろ。好きなんだろ、祐也さんのこと』


 カズの言葉に、もう、返す言葉なんか、浮かばなくなった。