前方では相沢とカズが楽しそうに会話してる。
相沢はどうだか知らないけど、カズは嬉しいに違いない。

だから、それの邪魔をしないように少し距離を置いて歩いた。



隣には、俺に歩調を合わせる祐也がいる。



俺の腕をつかんでいる手に触れたくて、
反対の手で払ってみた。

その手を祐也の手につかまえられて、思わず手を引っ込めた。

隣には、そうやって俺を気遣ってくれる、祐也がいる。


 しばらくどこに向かってるのかもよくわからない方向に歩き続けて、出たところは駅前だった。駅前まで出るのにわざわざ遠回りをしたみたいで、そのへんは多分カズの魂胆に違いない。

 少しでも長く相沢と一緒にいたいんだろうな。

 俺と祐也が少しでも長くいられるように気を遣ってくれたのもあったのかな。

「駅前…?」

 隣にいる祐也はどうして遠回りしたのかわかってないみたいだったけど。

「たまには遠回りもいいな。」

 ごまかすように俺が言うと、いつものにっかり笑顔を浮かべてくれた。

 今にも腕でも組み始めそうな前方の二人が何度かこっちを振り返って、二人同時にあのクレープ屋を指さして、またこちらを見た。

“ここに入らない?”っていう意味なんだとは思うけど。


 頭をよぎったのは苦手な甘い生クリームの映像だった。



 思い出しただけでもイライラしてくる。