「本当に?すごいじゃん。」


 昼休み、快晴。屋上で一緒にパンをかじっていたカズが叫んだ。

「別にすごくはない。」

 昨日の一連の出来事を話すと、カズは本当に嬉しそうな顔をした。

 すごいことなんかじゃない。

普通に、友達同士でやるようなことをしただけ。
祐也は俺のことをきっとそういう風に思ってるに違いないから、俺もそう思う。

「でもお前、甘いのダメって言ってなかったっけ?」

「ダメだよ。」

「でも、クレープ食ったんだろ?」

「帰ってからリバース」

「そうなのか。」

 それが、昨日の出来事の結末だ。ロマンも何もない。

帰ったら急に気持ち悪くなって、そのまま戻した。無理して食べなければよかったって、後悔先に立たず。

 でも、それさえ。気持ち悪くて戻したイヤな思い出さえ、祐也と一緒にいた証なんだと思う自分が、何だか情けない。



「少しは脈あるんじゃないのか」

 そう言ったカズの言葉を、俺は聞こえていないフリをした。


 脈なんかない。ただ、俺が期待するだけだ。

祐也にとっては、普通の仕草。もしかしたら、俺をハメて楽しんでるのかもしれないけど、俺からしたら、ドキドキする仕草ばかり。


 祐也は、俺のこと何とも思ってない。


「ところで、相沢とはどうなんだよ。」

 そう尋ねると、今までの会話なんて全部忘れたように、にっかり笑顔を浮かべてカズが話し始めた。

 昨日、相沢と一緒に帰ったらしく、そのことをずっと。楽しそうに。


 俺も笑ってその話を聞いた。


片思い同志のはずなのに、どうしてカズはこんなに楽しく相手のこと話せるのに、俺は暗い顔でしか祐也の話が出来ないんだろうって思ったら、うらやましくなる。


 こんなの言い訳かもしれないけど。


 どうして俺は女の子に生まれて来なかったんだろう。



 こんなの、不公平だ。