「…じゃあね」

「ありがとう、可愛いよ」


思わず私は笑ってしまった。私が笑うと、陸も笑った。

帰っていく陸を見ていると後ろから声をかけられた。


「あれ、林檎」

「柚希先輩!」


待ってたということを伝えると、柚希先輩は笑った。


「何であいつ来たんですかね」

「ん?あぁ…俺と林檎に会いに来たんだとさ」


柚希先輩は陸の話をすると嫌な顔をする。


「先輩、あいつと仲良くしてください」

「え」


自分でも訳がわからないことをいってると思う。

でも、


「陸は私と同じくらい柚希先輩が好きです。だから嫌われたくないのは私と同じだと思うんです。私が言うのもあれですが…。」


私は陸が嫌いだ。怖いし嫌な思い出だ。でも、陸は…


「要するに、陸を嫌うのは私だけでいい、と」

「違っ」


先輩は冗談だよ、と笑った。


「わかったよ、話してみるよ。まだ言ってなかったっけ?」


先輩は中学の頃の彼女を陸に…取られたらしい。

その日から陸を嫌ったのだと言う。


「入れてはないみたいだったけどね。」

「入れ…、あぁ。」


今は中学生でもやってる人いるみたいだしね。いや恐ろしや。まだ早い。


「私は陸が嫌いだけど、笑っててほしいんです。なんかよくわかんないんです…。」

「そっか。ねー林檎」

「はい?」

「キスしていい?」

「へ!?」


先輩が浮かべる笑みは陸にとてもよく似ていた。

こういうとこ似てるよなー…。


「い…いいですよ」

「あ、顔赤いよ」

「言わなくていいです!」


路地裏で私は壁に背をつけ、先輩とキスをした。