「柚希ー!」

「うわっ…何でいんだよ!」


あいつが、陸が柚希先輩に抱き付いていた。

綺麗な笑みを浮かべる陸とは対照的に、柚希先輩は嫌そうに陸から離れようとしていた。

私は反射的に陸から一番遠いドアの前に立ち尽くしていた。


「お久しぶりだね!またかっこよくなっちゃってー、あ、シャンプー変えた?」

「くっつくなって!寒気がする!」


二人がどういう関係か詳しくは知らないが、腹違いの兄弟ということは知っていた。

柚希先輩は私に呼び掛けた。


「林檎、帰っていいよ」

「え?」

「こいつ面倒だから…早く行った方がいいよ」


お言葉に甘えて…。震える脚に力を込めて教室を出た。