いつか君と


「逆に嫌じゃないとでも思ってんの?随分めでたい頭してるよね」

「やっと喋ったね」

「あんたと話すなんて酸素の無駄だから」

「地球に優しいんだね」


突然キレ始めた私に驚きもせず、楽しそうに返事をする陸に更に腹が立った。

口だけは動くのに、手足が凍ったように動かない。


「誰があんたに連絡なんてするか」

「りんが」

「はぁ?ふざけんな…」

「…最後に確認ね」


そう言うと陸は、やっと動いた私の足を止めるように後ろから私を抱き締めた。

もう私の口は動かない。陸の大きな手によって遮られている。


「俺に会ったって誰にも言うな」

「…」

「あと、メールね」

「…」

「返事は?」


陸の人差し指が私の舌と唇を撫でる。

とにかく、この男と早く離れたい…。


「…はい」

「ん、じゃね」


カチャ、と音をたてトイレのドアが開く。

誰もいなくなった使用禁止のトイレにしゃがみこんだ。