「…っ…!?」
両手を捕まれて、足も恐怖で動かない。
身体をよじっても、無意味。
私は堪えきれなかった声を漏らしながら抗うことしかできない。
何故か、涙は出ない。
「…ね、メアド教えてよ」
「っは…っ…、は?」
凄い唐突。止めてくれたのは何より嬉しいけど。
陸は余裕と若干の色気を含んだ笑みを向けた。
暑さと背筋の冷たさと吐き気で、私の気は参っていた。
「携帯どこ?」
「ちょっ…触んな…」
「無いの?」
「い…ま修理中…!」
スカートのポケットに手を入れられ、怖気が走った。
「あ、そーなの?じゃありんからメールして?」
何で、この男は私を疑わないんだろう。私がメールすると思ってるのだろうか。
俯き下を向いていると、握られていた左手に細いものが走る感触がした。
「…柚希とか裕人とかに言ったらどうなるかわかるよね?」
「…!」
手から感触が消えると、陸は私から離れた。
「じゃあね、メールしろよ?」
「…や…」
「終始震えっぱなしじゃん…そんな嫌?」
「…ば…馬鹿じゃないの?」
私は怒りが押さえきれなくなった。

