「っ…!」

「待ってよ、人の顔見るなり逃げないでよ」


私の手を掴む陸。怖い、嫌だ、誰か…、

振り払う力すらも起きない。ただ、呼吸を整えようとすることしかできない。


「久しぶりだねりん」

「は…離してよ…っ」

「離したら逃げるでしょ?」


嫌だ、嫌だ、触るな、汚い、汚い、汚い、嫌だ…!


「何で泣くの?」

「い…嫌、離してよ…!」

「会いたかったよ林檎」


あの頃大好きだった笑顔も、大好きだった声も、大好きだった手も、今はただ汚いだけ。


「ね、林檎、話したいことあるから」

「やだ…っ、離して!!はな…んっ」

「人来ちゃうから静かにして」