裕人は焦りを隠した顔で言った。
「今は一緒に住んでいるんですか?」
「いや、しばらく会ってすらいないよ」
少し安心したような表情になった裕人は、床に頭をつけた。
「お願いします、林檎を守ってください」
人に土下座をされたのは初めてだった。
「ちょ、やめてよ、頭上げて」
「お願いします、」
裕人は土下座をやめたが、それでも強く頼む。
「んー、じゃあ、彼女を生徒会にしてもいいなら…」
「ありがとうございます!」
まじか、いいんだ。まぁ今幹事空いてるし…。八幡さん真面目そうだから良いかも。
「八幡さんを一人にさせないってことでしょ?」
「はい、」
うん了解、とだけ返事すると裕人は何度も感謝してきた。
「じゃ、僕用があるから…」
「あ、すいません!ありがとうございました。」
お土産みたいなものでうまい棒を貰って裕人の家を出た。
「…」
裕人の前では軽そうに承諾したけど、内心不安だった。
陸が女の子にそんなことを、人生を狂わすようなことをするなんて…。
両親が離婚した小学校以来会っていなかったけど、そんな人になっていたなんて…。
陸は元々兄弟として苦手で、兄弟でいることが不快だったけど、
今、人として不快に変わった。
家に向かい、裕人に貰ったうまい棒をかじった。

