「嘘」

「嘘じゃないよ!?」


裕人、どうしたんだろう…。酔っ払いみたいだよ。…酔っ払い!?


「前見たし。公園で抱き合ってんの。」

「…いや、まぁ、あれはねぇ…」


あれは恋とかそういった類いのものはないから…。といおうとした瞬間、裕人が顔を上げた。


「林檎ー」

「はい?」


私が返事をすると、裕人の手が離れた。


「俺さ、今日陸に会ったんだ」

「…」


裕人はいつも不思議な目をしていた。真っ直ぐで、どこか安心する目。

でも今日は、目を逸らしていた。


「陸ね、林檎のこと聞いてきた。元気?って」


ふざけないでよ…、何が元気だよ、


「でさ、俺ふざけんなっつって帰ろうとしたらね、」

「うん」


冷房が効いた玄関にいるのに、私は炎天下にいるような暑さを感じていた。