Dead Love Children

 でもその怒りの感情も、モモカのお墓の前で手を合わせて、

「ごめん、俺なにもできなかった」

 と言うと、涙と一緒に流れて行ってしまった。

 俺は強い人間だった。

 少なくとも周りにはそう思わせて生きてきた。

 酒を飲んだオヤジに血が出るまで殴られようが、中学の時にクラスの奴らに集団で無視されようが、涙を流すどころか弱音さえも吐かなかった。

 むしろ逆で、こんな奴らに負けてたまるかと思ったし、ケンカを売られたらすぐに返り打ちにした。

 一度も負けなかったし、ヤクザの下っ端だってボコボコにしたことがある。

 それなのに、お墓の前に来てモモカの死に直面すると、俺はまるで赤ん坊のように声を出して泣いてしまった。

 周囲に誰もいなくて良かったと思った。

 こんなに泣いたのは生まれて初めてだった。

「悔しかったろう」

 幸福を絶たれることの冷たさは、味わった本人にだけ分かることだ。

 だから俺はそう言ったんだけど、もう何もかもが終わってしまったあとだった。

 モモカの学生姿も、モモカの看護師姿も、そしてモモカのご飯を食べる姿も、もう目にすることができなくなってしまった。

 こんなに残酷なことがあるだろうか。

 悔しくて悔しくて、俺はモモカのお墓の前でいつまでたっても涙を流し続けた。