君想歌

「こんな格好、なんでしてるの?」


栄太郎の両手が廊下の壁に
逃げ道を塞ぐように付かれる。

鼻が触れそうなくらい近い栄太郎の顔に鼓動が速まる。


「……成り行きです」


「あぁもう。
俺は頑張って抑えてるのに…」


顔を反らした栄太郎だけど
耳が赤い。


あれ、顔真っ赤。


「綺麗な格好なんだから。
許しなよ?」


すっと栄太郎の唇が和泉の
紅をひかれた唇に触れる。


「朝まで居るんでしょ?
身体は求めない。
一緒に寝よう?」


真っ赤になりながら唇を
押さえる和泉に栄太郎は
肩を揺らして笑う。


「そ…だけど……」


しどろもどろの返事をする
和泉の手を握り、栄太郎は
歩いていく。


「あ、和泉。
借りていくよ?朝まで」


廊下の角に声をかけると
もう振り向かなかった。