君想歌

吉田は和泉の髪を掬っていると
思い付いたように呟いた。


「何だ……。隠してるんだ」


首筋に掛かった髪を上げると
昨日吉田が噛みついた痕が
薄くなってはいるが残る。


「あっ当たり前でしょ!?
副長に見られたんだよ!」


不満そうな吉田に
目を軽くつり上げる。


だから今日はそれを隠すように
横で髪を結っているんだから。


「じゃあ今度は噛む方じゃなくて
良いんだ」

「おい。こら。調子に乗るな」


首筋に顔を近付けてきた
妖艶な笑みを浮かべる小悪魔。

その顔をぐいと手で押す。

吉田は残念そうにするが一度
許せば懲りずに会うたびに
続けそうだから。


「それなら痕が残らなかったら
良いんだ」

楽しみを見つけたよう吉田の
口元がゆるりと弧を描いた。