君想歌

朝餉をのんびりと食べると
急ぎはしない外出の準備をする。


買うものも無し。
用事も無し。


ただ屯所に居ても何も
することがないとの簡単な理由。

部屋を出ようとした和泉は
足を止める。

視線が向いているのは押し入れ。


いっそのこと栄太郎に全て
話してしまおうか。


なんて考えながら川へと
足を向けた。




「和泉〜」


別に待ち合わせをしたわけでも無い。

引き合わさせれるように
出会ってしまう二人。

和泉の定位置には既に吉田が
腰を下ろしていて姿が見えると
手を振ってくる。


「やっぱり来ると思った」


「超能力者か何かなの?」


のほほんと言う吉田に
驚いた様子はみられない。

まるで和泉がここにくると
予測していたみたいだ。


和泉の問い掛けにきょとんと
首を傾げた吉田は笑いだす。


「それを言うなら俺もだけど。
和泉だって同じだよ?」


考えを変えれば。

栄太郎が行くところに
私が行っているとも解釈出来る。