君想歌

勢いに押され返す言葉も無く
沖田は走って行ってしまう。


縁側に一人取り残された和泉は
膝を抱えた。


吉田の存在が隣からなくなり。

出会う前の生活に戻った。

ただそれだけ。

なのに。


存在が消えてしまうことが
とてつもなく恐い。

吉田が付けた跡が薄くなるたび
かすっただけの刀傷を深く抉る。


私だって忘れたくないんだ。


温もりも笑顔も。

教えてくれた感情も。


キシリと廊下が軋む。

顔を隠した和泉の頭に手の平が
不意に乗る。


「無理に忘れようとしたら
駄目です。
好き、なんでしょ?」


顔を上げようとした和泉を
沖田はやんわりと押さえる。


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