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二階へとあがる階段を
駆け上がる音が近づく。

和泉の刀は吉田の胸元に届く
僅か手前で止まっていた。


「無理……無理だよ」


首を振った和泉を吉田は
抱き締める。


するりと吉田の手のひらが
頬を撫でる。


「……ごめんね。和泉」


小さく息を飲み一歩下がろうと
足を引きかける。


あの状態で。

和泉を抱き締めれば。


もちろん刀は吉田の胸を貫く。

痛みに息を荒くする吉田に
身体が震える。


「和泉…笑って……」


吉田の腕が和泉の背中を撫でる。


急所を突くはずだった刀。


気力だけで話す吉田に
いつものように笑いかけた。


「……ありがと」

消えそうな声で吉田も笑い
畳へと倒れた。


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