どの道を通って。

いつ屯所に戻ったとか。


記憶が抜け落ちたかのように
まったく覚えていない。


気づけば。

行灯の光が小さく揺れる部屋で
布団に寝ていた。


外はまだ暗い。


一瞬。

さっきの事は嘘だったんじゃ?

そう思うが身体の傷や。

薄い着物から覗く胸元の印は
紛れもなく真実だと示す。


あやふやだった記憶は紅い華に
手を添えた瞬間。

頭の中に濁流のように
一気に流込んでくる。


「……殺したんだ。稔麿…」


知らぬ間に握り締めていた手。

強く握り締めすぎたせいで
爪が食い込み血が滲む。


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