口にしたはずの言葉は彼女が
刀を落とした音に消された。


沈黙を熱を帯びた夜の風を
静かに揺らした。


気配に気付いたのか和泉は
緩慢な動作で顔を向けた。


「遅かったね。応援も来たんだ。
吉田なら死んだよ」


書かれた物を読むような。

まるで感情が見えない和泉に
戸惑う。


「下、降りてるから」


和泉は一度も目もあわさずに

廊下に出ていった。


余りにも素っ気ない態度に
ぐらりと視界が揺れた。

「暑っ……」

「総司!!」


和泉の態度に、じゃないですね。

暑さにあてられたらしい。

それだけ分かります。


崩れ落ちるように倒れた僕を
支えた斎藤くんの焦った声が
どこか遠くに聞こえた。



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