君想歌

先程までしていた物音は
奥の部屋から。

今はぴたりと収まり。

あれほど騒がしかった屋内は

足音しか響かない。


吉田は居たのだろうか?

疑問が膨れ上がる。


奥の襖にそっと、
開くために手を掛けた。

斎藤くんは目で早くしろと
急かしてくる。


廊下とは違って開けた襖から
涼しい空気が流れてくる。


窓が開いているせいか
とても風通しが良い。


血の匂いを含んでいる。

その事実を除けば。


畳に倒れている吉田の胸元から
見慣れた赤色が広がっていた。

血のついた刀を手にした和泉は
ちょうど前に立っていた。


「和泉、大丈夫ですか?」


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