君想歌

*沖田総司*

ほんと。暑いですね。


頭を振って気をまぎらわせる。


僕は二階に上がろうと身体を
反転させた。


二階にも残党は居るだろう。

一人で上がっていった和泉に
心配も募る。


だが入口が一気に騒がしくなり
足を止めた。


「今から捕縛に変更しろ!!」


背後から飛んだ土方さんの声に
振り返る。


ようやく応援が来たらしい。

土方さんはすぐに池田屋の外に
出ていった。


その隣を颯爽と通り過ぎた人物。


二階に走る斎藤くんに続いて
慌てて追い掛ける。


「ん……」

二階の惨状は予想以上に
酷かった。

下よりも濃くなった血の匂い。
思わず顔をしかめる。

これを和泉一人でやったとは
到底信じがたい。


刀で斬られた傷口を見て
あ、と声を漏らす。


乱れたりすることのない
和泉の太刀筋。

粗雑さが目立つそれは和泉の
心の動きを表しているかの様で。


見て見ぬふりをした。


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