君想歌

何事も無かったかのように
静寂が満ちた蔵に和泉は
足を向けた。


わずかばかりに開いた扉から
中を覗いた和泉は口元を覆った。


「馬鹿野郎!!何で来た!!」


物音に振り向いた土方は
怒声を上げる。




土方が呼びに来るまで大人しく
仕事をこなしとけば良かった。

目に映った光景は凄惨で。


叫び声が聞こえなくなったのは
もう枡屋は虫の息だから。


扉は立ち込めた血の匂いを外に
流すために開けられていたから。


一切の妥協がない鬼副長は
戸惑いを見せたもの和泉から
視線を外した。


何故なら枡屋が掠れた声で
計画を話し出したから。




八月十八日、京を追われた
尊王攘夷派の志士達は。

今月下旬、強風の日を選び。

御所に火をつけ天子様を
長州に連れ去る。

さらには佐幕派の大名を
待ち伏せ殺害する。



とんでも無い計画に和泉は
地面に膝をついた。

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