君想歌

六月五日、早朝。


「枡屋を捕縛する」


土方の一言により組内は
慌ただしく動く。


土方より出動命令を受けた
一番隊、五番隊が突入。

逃げ出そうとした枡屋を捕縛し
屯所へと連れ帰った。


枡屋は蔵へと放り込まれ
土方は入口に居た和泉に
羽織を押し付ける。


「汚したくねぇから持ってろ。
お前は隊士たちを頼む」


この場から一刻も早く。

和泉を遠ざけたかった。


枡屋と繋がる吉田。

どう転んでも和泉を苦しめる。

その選択した土方の本心は
逃げ出したかった。


「了解」


短く返事を返し屯所内に
和泉は足早に入っていく。



「……らしくねぇ」

その後ろ姿が完全に消えると
蔵へ一歩足を踏み入れた土方。

そこには先程の土方は
居らず。


ただ感情を圧し殺した
無慈悲で冷徹な鬼が居た。


.