君想歌

遠くから聞こえる三味線の音。

歌声や笑い声も無い空間で
構いやしない。


吉田と居られるという事実は
変わらず一番嬉しいのだから。

「和泉は他の女みたいに
物を求めないんだね?」

和泉の手をなぞりながら
ふと吉田は言った。

「言葉でしか分からない事もある」

「俺の気持ちを和泉が分かるのは
それが理由か」


和泉の答えに吉田は指を絡ませ
手を握る。


「和泉に出会って無かったら
俺どうなってたと思う?」


「どうとは?」


吉田の顔を見上げた和泉と
視線を交差させる。

「和泉と会ってなかったら。
人と関わりを持たないまま。
復讐だけに走ってたなって」

今では考えられないと吉田は
肩をすくめて見せる。

「……出会いは必然だったの」

「そうだね」

和泉の言葉に吉田だって
同じ思いを抱いていた。



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